同友会からのお知らせ
2020.05.25 | 永久劣後ローンに関する緊急要望・提言 |
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中小企業の倒産・廃業を避け、雇用と日本経済を守るために永久劣後ローンに関する緊急要望・提言
私たち中小企業家同友会全国協議会[略称・中同協]は、1969年(昭和44年)設立以来、自助努力による経営の安定・発展と、中小企業をとりまく経営環境を是正することに努めて参りました。
新型コロナウイルス感染症の拡大は、「大恐慌以来」とも言われるほど、各業界に未曾有の規模で極めて深刻な影響を与えており、多くの中小企業が倒産・廃業の危機に追い込まれる切迫した事態となりつつあります。5月14日には多くの県で緊急事態宣言が解除されましたが、今後は「新しい生活様式」の下で、経済活動も一定の制約の下で進められることが想定されます。ワクチンの開発・普及等によって新型コロナウイルス感染症が終息するまでは長期間を要するとも言われており、多くの制約下での経済活動が長期化することを覚悟せざるを得ない状況にあります。
すでに多くの中小企業の経営は急激に悪化しており、まさに瀬戸際に立たされていますが、今後もさらなる悪化が懸念されます。中小企業経営者の経営意欲を喪失しないよう新たな政策を大胆に構築し、即実行することが求められています。そうでなければ国民の暮らしと生命は守れないという、まさに今「非常事態」にあると言えます。雇用と地域社会を守り、日本経済崩壊の危機を防ぐためには中小企業の維持・発展が不可決であり、私たちは下記のような政策の実施を緊急に求めるものです。関係各位の早急なご協力、ご支援をお願いします。
記
中小企業に対して永久劣後ローンの活用を進める政策を立案・実施することを要望します。
1.売上高急減などで自己資本の多くを毀損した中小企業に対しては、資金繰り支援と併せて資本増強策が必要であると考えます。中小企業に対して永久劣後ローンの活用を進める政策をぜひ立案・実施してください。当会としては以下のような制度を提案します。
2.永久劣後ローンとは、返済の優先順位が一般債権に劣後する借入金であり、議決権も返済期限もないものです。企業の業績が回復し、財務状況に余裕ができた段階で返済をすることもできる制度です。
3.金利は当初は無利息とし、支援先企業の経営安定化に伴って順次金利を引き上げることとします。ただし、今回歴史的な非常事態であることを踏まえ、通常の資本性ローンよりも低利なものとします。
4.対象企業を決める際は、その企業と取引のある地域金融機関の紹介・推薦を条件とすることで、不適切な企業に資金が流れるのを防ぐことが可能となると考えられます。一部の中核企業などに限定するのではなく、より幅広い中小企業を対象とした制度とします。
5.これを進めるうえで、政府は永久劣後ローンの買い取りをする仕組み(買取機構)をつくるなどして、金融機関の対応をうながすようにしてください。
6.私ども中小企業家同友会としても、会員企業をはじめ地域の中小企業に対して日常的な金融機関との接点強化、永続的な企業づくりなどについて、引き続き取り組んでいくことを呼びかけていきます。
なお、当会では第1次から第4次の「新型コロナウイルスに関する緊急要望・提言」で、「自粛・休業による売上減少などに対する補償」や「緊急融資制度等の拡充」による資金繰り支援などさまざまな要望・提言を掲げています。そちらもぜひご覧ください。
<補足資料>中小企業の財務状況からみた永久劣後ローンの必要性
●2020年版中小企業白書・小規模企業白書によれば、資本金1千万円未満の企業においては、2018年における年間固定費(役員給与・賞与+従業員給与・賞与+福利厚生費+支払利息など+動産・不動産賃貸料+租税公課)と流動性の高い手元資産の比率は、全産業(除く金融保険業)で0.97と1年分に満たず、飲食サービス業 0.47(全規模で見れば0.45とさらに悪化)と半年未満、宿泊業に至っては0.24と3ヶ月分にも満たない状況で、固定費が企業経営に大きくのしかかっています。営業自粛あるいは消費動向の変化による売り上げの減少は、ただちに固定費の支払いを困難にさせることから、これを借入金によって賄うことが第一の対策であり、これについては緊急融資としてさまざまな施策が実施されているところです。
●しかし、2016年版中小企業白書によれば、中小企業の借入金依存度(総資産に占める借入金の比率)は40%以上に達しており、大企業に比して極めて高い水準となっています。さらなる融資による負債の増加は中小企業の財務を一層悪化させる恐れが極めて高いと言えます。
●そうすると、緊急融資制度だけではなく、給付金・補助金などの支援が不可欠であるといえますが、中小企業には最大100万円から200万円の持続化給付金制度が準備されているとはいうものの、上述のとおり高額の年間固定費を賄うには到底及んでいません。
以上のことから中小企業に対して、財務的には実質的に自己資本として機能する永久劣後ローンの活用が必要と考えます。
<参考資料>
日本経済新聞2020年4月3日「中小企業支援、永久劣後ローンで5兆円用意を」
三井住友信託銀行 名誉顧問 高橋 温氏
スモールサンニュース4月号・号外
立教大学経済学部 名誉教授 山口義行氏
岡三証券TODAY4月21日「コロナショックで10兆円資本注入が中小企業向けに必要と考える理由」
岡三グローバル・リサーチ・センター理事長 エグゼクティブエコノミスト 高田 創氏
ニッセイ基礎研究所・研究員の目4月21日「事業会社への資本注入 危機対応として制度の準備は必要」
総合政策研究部 研究理事 チーフエコノミスト 矢嶋康次氏、総合政策研究部 研究員 鈴木智也氏
以上
2020年5月25日
中小企業家同友会全国協議会
会長 広浜 泰久